建築・建設業でのテレワークを考える

政府が推進する働き方改革や新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、建築・建設業界でもテレワークの必要性が高まっています。一方、「建設業とテレワークは相性が悪い」と思っている人もいるでしょう。現場でしかできない作業は確かにありますが、業務を切り分ければテレワークは可能です。

2024年にはいよいよ建設業でも時間外労働の上限規制がスタートします。テレワークを賢く活用して労働時間の削減につなげましょう。労使双方にとってテレワークで得られるメリットは小さくありません。「できない」と諦めるのではなく、できるところから着手することが大切です。この記事では、建築・建設業のテレワークや導入のメリット、利用できる補助金や助成金について解説します。ぜひ参考にしてください。

テレワークの定義とは?

厚生労働省によると、テレワークとは「情報通信技術(ICT/Information and Communication Technology)を活用した時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方」です。オフィス以外の場所でインターネットやパソコン(PC)、スマートフォンなどを使って働くことを意味し、在宅勤務とモバイル勤務、サテライトオフィス勤務の3種類に分けられます。在宅勤務のイメージが強いテレワークですが、工事現場でモバイル勤務をすることもテレワークの一種です。

建設業のテレワークは業務の切り分けを

建設業でテレワークを導入するためのポイントを作業内容別に解説します。

現場作業員

現場作業員の業務にテレワークを導入するためには、「現場でしかできない作業」と「それ以外の作業」を明確に切り分けることが大切です。現場でなくてもできる作業の効率化を意識しましょう。

たとえば、出勤退勤の通知や日報作成などの事務作業が現場でできれば、作業員の直出・直帰が可能です。工事写真の撮影と整理は手間のかかる作業ですが、電子黒板のアプリを使えば1人で撮影ができるうえに写真が自動的に整理されるため、大幅な効率アップにつながります。図面や書類をクラウド上で管理して現場のノートPCやタブレットで確認・共有すれば、紙の資料は必要ありません。修正が発生してもスピーディーに対応できます。

建設業界に特化したテレワークのツールは多数開発されています。ツールが導入できない場合でも業務フローを見直すなどして、できることから段階的に取り組みましょう。

オフィス内作業

オフィス内のPC作業はテレワークにシフトしやすい部分です。Web会議やクラウドツールなどを利用すれば自宅で作業ができますが、テレワーク用PCの支給やセキュリティ対策など解決すべき課題も少なくありません。

緊急事態宣言中のテレワークで「ハンコをもらうための出社」「書類を提出するための出社」が問題になった影響で、ハンコやファックス廃止の機運が高まっています。電子契約も普及しつつありますが、取引先の都合でできないこともあるため、社内でできるところからハンコの廃止やペーパーレス化を進めましょう。

建設業にテレワークを取り入れるメリット

建設業にテレワークを取り入れる3つのメリットについて解説します。

事務職員の負担軽減

1つ目のメリットは、事務職員の負担軽減です。現場作業員が行うべき事務作業を事務職員が代行していると、休暇が取りにくくなったり残業が増えたりして長時間労働につながりかねません。特に事務職員の人数が少ない場合は負担が大きくなりやすいため、自分のことは自分でできる仕組みづくりが必要です。

一方、事務作業をテレワーク化すれば通勤が不要となり、育児や介護をしながら働けます。また、本来の業務に集中しやすくなり、ワーク・ライフ・バランスの実現にもつながります。

属人化した業務の見直し

2つ目のメリットは、属人化した業務の見直しができることです。アナログ作業が多いこともあって建設業では業務が属人化しやすい傾向が顕著です。「その人がいないとできないことがある」「人によってやり方や仕上がりが違う」などの問題が起こることも少なくありません。専門資格が欠かせない作業では見直しが難しい場合もありますが、業務を切り分けながら作業の標準化を図りましょう。

特に事務職員の業務は標準化しやすい部分です。全員が同じやり方で作業ができるようになれば、ローテーションでテレワークができる環境も作れます。

柔軟な働き方

3つ目のメリットは、プライベートの事情にあわせて柔軟な働き方ができることです。建設業では労働者の高齢化と若者離れが深刻化しており、離職を防ぐとともに優秀な人材を確保することが重要な課題となっています。テレワークが導入されれば、これまで育児や介護で退職を余儀なくされていた人も仕事を続けやすくなります。

企業側にとってのメリットも小さくありません。離職率が下がれば求人活動や社員教育にかける時間や費用の削減が可能です。建設業でテレワークに対応していることは大きな強みとなり、若者や女性などテレワーク志向の強い人材の入職にも期待できます。

テレワーク導入で使える補助金や助成

ここからは、テレワーク導入で利用できる補助金や助成金、支援事業の概要を紹介します。

働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)

働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)は厚生労働省の制度です。在宅勤務またはサテライトオフィス勤務のテレワークに取り組む労働者災害補償保険適用の中小企業事業主に対して、費用の一部を助成します。

項目 概要
支給対象となる取り組み テレワーク用通信機器の導入・運用就業規則・労使協定等の作成・変更労務管理担当者に対する研修など
対象経費 謝金、旅費、借損料、会議費、雑役務費、印刷製本費、備品費、機械装置等購入費、委託費
助成額 対象経費の合計額×補助率(上限額を超える場合は上限額)
補助率 目標達成時:3/4(1人あたり40万円・1企業あたり300万円)
目標未達成時:1/2(1人あたり20万円・1企業あたり200万円)

※参考元:働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)|厚生労働省

働き方改革推進支援助成金(新型コロナウイルス感染症対策のためのテレワークコース)<2次募集>

新型コロナウイルス感染症対策としてテレワークの新規導入に取り組む中小企業事業者向けの助成金制度です。2次募集分の交付申請期限は2020年9月18日までですが、継続的に実施される可能性もあるため、公式サイトをこまめに確認しておきましょう。

項目 概要
支給対象となる取り組み テレワーク用通信機器の導入・運用就業規則・労使協定等の作成・変更労務管理担当者に対する研修など
対象経費 謝金、旅費、借損料、会議費、雑役務費、印刷製本費、備品費、機械装置等購入費、委託費
助成額 対象経費の合計額×1/2(1企業あたり100万円まで)

※参考元:働き方改革推進支援助成金(新型コロナウイルス感染症対策のためのテレワークコース)|厚生労働省

IT導入補助金

IT導入補助金は、経済産業省管轄の独立行政法人・中小企業基盤整備機構が実施する補助金制度です。ポータルサイトに登録されたITツールを中小・小規模事業者が導入する際に、経費の一部を補助します。大きく3つの種類があり、A枠とB枠は通常枠、C枠は新型コロナウイルス感染症対策としてIT導入を実施する事業者が対象です。

種類 補助金申請額 補助率 概要
A枠 30万円以上150万円未満 1/2以下 会計・財務、テレワーク基盤、顧客対応、決済など
B枠 150万円以上450万円以内 1/2以下
C枠 30万円以上450万円以内 3/4以下 サプライチェーン毀損への対応、非対面型ビジネスモデルへの転換、テレワーク環境の整備

※参考元:IT導入補助金2020|経済産業省近畿経済産業局

テレワークマネージャー相談事業

総務省が認定したテレワークマネージャーによるコンサルタントを無料で利用できるサービスです。Web会議と電話、派遣訪問に対応しており、テレワークに関するアドバイスが得られます。補助金や助成金が支給される制度ではないため、注意しましょう。

項目 概要
費用 コンサルタント費用:無料(通信費は実費負担)
回数・時間 支援の上限なし(派遣訪問は1企業あたり3回まで)1回1~2時間程度
支援内容 テレワークの効果・テレワークに適したシステム・勤怠労務管理などに関するアドバイス(2020年度に限り情報セキュリティにも対応)

※参考元:総務省令和2年度テレワークマネージャー相談事業|総務省

まとめ

アナログ色が強めな建築・建設業でもテレワークはできます。まずは業務内容を見直して適切に切り分け、段階的な導入を目指しましょう。オフィス内のPC作業は在宅勤務に向いており、建築・建設業向けツールを導入すれば現場のモバイル勤務も比較的簡単に実現できます。政府の補助金や助成金制度を賢く活用して、働き方改革や感染症対策に取り組みましょう。情報セキュリティに不安がある場合は、テレワークマネージャー相談事業を利用してみてはいかがでしょうか。