建築図面の基礎知識!まずは図面の種類と役割を知ろう

建築図面と一口に言っても、その目的によってさまざまな図面が作成されます。建築主は設計者に要望を伝えますが、設計者は数多くの法規制を踏まえて設計しなければなりません。また、実際に施工する場合にはより詳細な図面が必要になります。電気や水道などの各種設備の工事をするには、その配置などがわかる図面も必要です。

この記事では建築図面とはどのようなものか、図面にはどのような種類や役割があるのかなどについて説明します。

建築図面とは?

建築物を建てる場合、まず建築主はどのようなものを建築したいのかという要望を設計者に伝えます。設計者は建築士の資格(一級、二級、木造の3種があります)を有し、建築主の要望をもとに建築する建物についてさまざまな角度から検討して設計図を作成します。施工業者はこの設計図をもとに建物を完成させます。

設計図は建築図面と呼ばれ、建築主、設計者、施工者の間にどのようなものを建築するのかという認識を共有し、確実に相互の意思疎通を図るための重要な手段となるものです。図面の目的について、製図に関する規格となる「JIS Z 8310 製図総則」では「図面使用者に要求事項を、確実に伝達することにある」としています。

建築図面には、基本設計図、実施設計図、施工図など目的応じて各種あり、細かく分類されています。

基本設計図・実施設計図・施工図の違い

まず基本設計図、実施設計図、施工図の概要とそれぞれの違いについて説明します。

「基本設計図」は建築主が希望する間取り、構造、材料、設備など建物の骨格となる部分を図面化したもので、法規制などの条件に合わせて作成するものです。通常、建築主にわかりやすく説明するために作成されます。この段階で建築主は設計者と十分に話し合い、設計内容を理解しておく必要があります。施工が始まった後では変更することが難しいためです。

「実施設計図」は工事を発注するために基本設計図に基づいて作成されるもので、設備図や構造図などが付け加えられ基本設計図より詳細で専門的なものになります。

「施工図」は施工管理技士や建築士などの資格を持つ現場の建築担当者が実施設計図をもとに作成する工事用の図面です。これをもとに電機や機械設備担当者が付け加え、品質、コスト、環境、安全、工程などの検討を行うとともに、専門工事業者や職人に指示を行います。

基本設計図とは

基本設計図について、もう少し詳細に説明します。

設計に際しては建築主からさまざまな要望をヒアリングし、建築の意図などを確認します。一方で、建築物を建てるときは都市計画法や建築基準法など多くの法律に準じて建てなければならず、さまざまな制約があり建築主の要望をすべて実現できるわけではありません。

そのため、建築主にそうした制限や条件を説明しながら調整する必要があります。

設計前に議論する内容の例を挙げると、建物の使用目的や規模、耐用年数、建物の仕様、収支計画、敷地の立地条件、地盤の状況、建築基準法等における制約の有無、近隣の環境などがあります。

これらの調整が済むと計画説明書、配置図、平面図、立面図、断面図、矩計図(かなばかりず)、外構・主要部分の展開図などや電気・給排水などの設備計画概要書などが作成されて、次の実施設計図の作成に進むことになります。

実施設計図の種類

基本設計図が決まると、建設会社に工事を発注するための「実施設計図」が作成されます。これには大きく分けて意匠図、構造図、設備図があり、それぞれさらに細分化されます。

「意匠図」は建築物の形、全体構成、間取り、意匠(デザイン)、仕様関係などを明示する役割があります。「構造図」は建築物の柱や梁など建物の安全性に関わる構造部材を示す図面です。「設備図」はコンセント配線、照明配線、水道管やガス管などの配管・配線図のことで、各設備の位置や数などがわかります。

以下にそれぞれ詳しく解説します。

意匠図

意匠図には、平面図、断面図、立面図、矩計図(かなばかりず)、天井伏図、展開図、平面詳細図、配管図などがあります。主なものについて以下に説明します。

図の種類 図の役割
平面図 建物の各階を水平に切断して上から見下ろした図面で最も基本となる図面です。間取り、建具の種類・位置、壁の種類や位置、開口部や雨戸などの位置や種類を示します。
断面図 各階の断面図を指定の位置で垂直に切断した図面。最高の高さ、各階高、天井、GL(地盤面の高さ)、FL(床面の高さ)、基礎深さなどを記載します。
立面図 建物の外観について、各面を正面から見た図面。屋根、外壁、開口部などの位置や形状などを記入します。
矩計図 建物を指定の位置で垂直に切断した図面で断面図の一種です。基礎、床、柱、壁、屋根などの種類や高さ、仕様などを記しています。
天井伏図 各階の天井を見上げた場合の形状、デザイン、照明位置などを示し、寸法、材料を記載します。
展開図 各部屋の内観を四方より見た図面。居室内部の壁面の形状、寸法、材料を表示します。
平面詳細図 平面的な納まり、構造躯体、仕様、寸法関係を詳細に示した図面です。
配置図 敷地の形状、敷地と建物の位置関係、敷地内外の高低差、方位、道路との関係など、敷地と建物と道路との関係がわかる重要な図面です。

構造図

構造図には、床梁伏図、軸組図などがあります。

図の種類 図の役割
床梁伏図 各階の床を上から見た平面図で、床についている梁や柱、壁などの構造材の寸法、位置、仕様などが記載された図面です。床下にある実際には目に見えない梁なども破線で示されます。
意匠図の情報をもとに、荷重に耐えるのに必要な構造体を記入します。
軸組図 建物の構造体を垂直方向に表現した図面です。通り芯で建物を切断した場合の断面を作成して、躯体の高さ方向の情報を記入します。土台、柱、梁、小屋束、母屋、継ぎ手などの架構(柱と梁で組んだ構造)や寸法、材料などを記入します。

設備図

設備図には、電気設備図、空調換気設備図、給排水衛生設備図などがあります。

それぞれについて以下で説明します。

図の種類 図の役割
電気設備図 配線図とも呼ばれます。平面図上に電気が分電盤から各部屋に配線される経路、コンセントやスイッチ、照明器具、換気扇、電話、エアコンなどの設備の位置が記入されます。
空調換気設備図 エアコンや室外機などの空調機や換気扇などを記載した図面です。エアコンと室外機を繋ぐ配管、換気扇の位置や換気能力などを記載します。
給排水衛生設備図 給水・排水・衛生の各設備の位置などについて記載した図面です。給水設備は上水道の給水配管経路や材質、蛇口の位置など、排水設備では排水管の経路やトラップの位置など、衛生設備であるトイレの位置などが記載されます。

施工図とは

施工図には、平面詳細図、躯体図、総合図などがあります。

図の種類 図の役割
平面詳細図 平面詳細図は平面図の縮尺を拡大して書く図面です。建具の寸法や壁厚寸法、躯体寸法など細かな寸法まで明記されます。仕上げ部分を作業するために建物の間取りを実際に表現する重要な図面で、断面の状況なども判断し屋内の高さ、フローリングの方向、納まりや仕上げなどを詳細に書きます。
躯体図 建物の柱、壁、梁、床、天井、屋根、階段などの骨組みを作る躯体工事を進めるために、構造図と平面詳細図などをベースにして作成されます。コンクリートの打設位置や寸法、通り芯、壁芯、コンクリートの断面寸法などが明記されます。
総合図 電気設備、空調設備、衛生設備などの各設備機器を配備するために、設備図と平面詳細図から情報を抽出して作成します。建築情報だけでなく、各設備の情報などすべての情報が盛り込まれるので総合図と呼ばれます。総合図では、壁や天井の表面に見える器具などを表現します。これによって納まりの検討ができます。

まとめ

建築図面は建築主、設計者、施工者が、建築する建築物について共通認識を構築して、相互の意思疎通を図る目的で作成されます。これには大きく分けて「基本設計図」「実施設計図」「施工図」の3種類があり、それぞれがさらに細かく分類されます。

基本設計図は建築主の要望を聞いて設計者が作成しますが、建築に関連する法律などを遵守しながら建築主と調整します。

こうして基本設計図が決まると工事を発注するための実施設計図が作成され、発注が決まると施工者は実施設計図をもとに現場で工事を行うための施工図を作成します。

これらの設計図や施工図を作成するには、一級建築士・二級建築士・木造建築士の資格が必要です。建築物の設計に携わりたいと考えている方は資格の取得を検討してみてはいかがでしょうか。