建設業界におけるコロナの影響は?今後求められることも併せて解説

新型コロナウイルスの感染拡大の影響による、東京オリンピックの開催延期に伴い、周辺設備の工期の遅れや中止など、さまざまな影響を受けた建設業界。コロナ前の建設業界は、人手不足や働き方改革の遅れといった課題がありましたが、コロナによって業務効率化が注目されたことによって、建設業界が抱える課題を根本的に解決することが求められるようになりました。今回は建設業界におけるコロナの影響や、建設業界の課題を解決するために企業ができることなどについてご紹介します。

建設業界の直近動向について

日本では長らく建設需要が低迷していましたが、2011年の東日本大震災の復旧・復興工事をきっかけに建設需要が上向き始めました。

これに加えて東京オリンピックやリニア中央新幹線といったさまざまな国家プロジェクトによって建設投資は増加傾向にありましたが、新型コロナウイルスの影響はどうだったのでしょうか。ここでは、建設業界の直近動向についてご紹介します。

コロナ以前の建設業界

東京オリンピックによる建設需要は、一都三県だけでも4,000億円という試算が算出されるほど大きな経済効果が見込まれています。ここでは、コロナ以前の建設業界の動向についてご紹介します。

「オリパラ特需」に湧いていた

建設業界への投資が減少していた理由の一つに、「コンクリートから人へ」というスローガンの元、公共事業費に充てていた税金を社会補償費に回すことを優先していたことが挙げられます。東京オリンピックの開幕を目前に控えた今、オリンピックスタジアムや選手村、周辺のインフラ整備などによって空前の建設特需に湧いているのです。

リニア建設・周辺施設の建設需要があった

東海道新幹線に次ぐ太平洋地域の新たな動脈として注目される、リニア中央新幹線。リニア中央新幹線は東京都と愛知県のほか、通過する神奈川県、山梨県、長野県、岐阜県にも駅が設置される予定であり、早くから駅周辺地域のインフラ整備や住宅の建設が進んでいます。

コロナによって打撃を受けた建設業界

東京オリンピックやリニア中央新幹線などの大規模プロジェクトによって盛り上がっていた建設業界でしたが、他の業界同様、新型コロナウイルスの影響を受けることに。建設業界は、コロナによってどのような影響があったのでしょうか。

受注数の減少

建設業界における新型コロナウイルスの影響に、受注数の減少が挙げられます。上場建設会社のうち、約90%の企業は新型コロナウイルスによって年間の売上が例年の20%近く減少したということも。新型コロナウイルスの影響で、発注者受注者ともに外出自粛やテレワークの普及によって営業活動が制約されたことが要因となった結果、新規の受注が少なくなったのです。

作業従事者の減少

新型コロナウイルスの影響で、受注が無くなってしまった中小民間建設会社も。その結果、作業員を雇用し続けることができず、雇い止めを実行した企業もありました。元々建設業界では作業員不足が問題になっていましたが、雇い止めによって属人化と人材不足に拍車がかかることが想定されています。

予算の削減

新型コロナウイルスによる業績悪化の影響で、新規建築予算を削減している企業が増加傾向にあるといわれています。例えば、静岡市は、市庁舎の移転・新築、歴史文化施設の建設、海洋文化施設の建設の3つのプロジェクトがありました。しかし、施工総額が7億3,000万円と高額であることに加え、新型コロナウイルスの影響で静岡市の財政が圧迫され、すべての事業が停止となってしまったのです。(※1)

(※1)日経X TECH『公共建築に襲いかかるコロナ・ショック』

コロナによって浮き彫りになった建設業界の課題

建設業界では、以前からさまざまな課題がありましたが、新型コロナウイルスによってそれらが顕著になって現れました。コロナによって浮き彫りになった建設業界の課題にはどのようなことがあるのでしょうか。

作業従事者の人手不足が進んでいる

建設業界では、「若年層の作業員人口が増えない、離職が相次いでいる」ことが原因で、人手不足の問題が年々加速しています。若年層の建設業離れは、少子高齢化が影響している面もありますが、建設現場では外気に晒されながら長時間肉体作業をし、危険を伴うことから精神的にも負担が大きく、敬遠されてしまったのです。実際、建設業界における20~24歳の若年層は、1995年は64万人だったのに対して、2020年は15万人と大きく減少していることがわかります。コロナの感染拡大の影響で、工事中断や発注の見合わせが発生し、やむを得ず作業員の雇い止めを行ったり、県外との往来制限によって現場に必要な作業員の確保が難しいといった問題も。コロナの蔓延によって元々作業員不足の問題を抱えていた建設業界に追い打ちをかけているのです。

(※2)一般社団法人 日本建設業連合会『2020 建設業ハンドブック』

各部門での属人化が激しい

建設業界は、設計図や報告書、日報といった書類を紙で管理していることが多く、業界全体でアナログ的な働き方が根強い業界といわれています。紙ベースで管理している場合、情報をメンバーに共有する機会を意識的に作る必要があり、業務の属人化につながってしまうのです。コロナの影響で作業員不足が進んでいる建設業界では、現場における業務の属人化がさらに進んでおり、本来作業員の担当業務を現場の監督者が担当しているといったことも一部ではあるといわれています。

他業界よりも賃金水準が低い

日本人の平均給与が430万円であるのに対して、建設業界における作業員の給与平均は380万円とやや低め。作業員の賃金水準が低い理由は「給与体系が日給制」「長時間労働」の2つが挙げられます。作業員の給与体系が日給制を採用している企業が多く、遅刻や早退などによって給与が変動するため、収入が不安定であるといえます。コロナの影響で90%近くの建設会社が業績悪化に転じており、給料カットに踏み切っている現状も。建設業界で働く人の中には、建設業界全体で業績回復の見通しが立たないことへの不安を感じて他業界へ転職したケースもあります。

コロナ渦でも需要が見込まれるプロジェクト

日本のみならず、世界的にコロナの収束はまだまだ見えていない状況ですが、コロナ渦でも継続して需要が見込まれるプロジェクトもあるのです。ここでは、コロナ渦でも需要が見込まれるプロジェクトについてご紹介します。

大阪万博(2025年開催予定)

2025年に開催予定の大阪万博は、大阪湾の夢州の155ヘクタールの広大な敷地に参加団体のパビリオンを建設したり、周辺地域にホテルを建設したりする必要があることから、建設投資は総額で2,000億円ほどになるといわれています。大阪府は、既にインフラ整備として、大阪メトロの延伸や市街地からのトンネル掘削を発表しているため、建設業界にとって大きなプラスとなるでしょう。

東南アジアを中心としたインフラ整備

成長が著しい東南アジアは、各国ともに新型コロナウイルスの影響で建設需要が落ち込んでいました。しかし、国内での感染拡大の抑え込みに成功しているタイやベトナム、マレーシアなどでは徐々に建設需要が持ち直しており、年内中にはコロナ前の水準と同程度になる見通しがあります。

アフターコロナの建設業界で求められること

建設業界ではコロナ以前から人手不足や賃金水準の低さなど、さまざまな課題がありましたが、新型コロナウイルスによってこうした課題が顕著になって現れました。建設業界における課題を解消するために、アフターコロナの建設業界ではどのようなことが求められるのでしょうか。

勤怠管理システムや業務管理システムの導入による管理工数の削減

現場の作業員の勤怠管理や工程管理を紙で行っていることが多い建設業界。紙管理は、他者への情報共有が難しかったり、保管場所を確保するのが大変だったりするなどのデメリットがあります。勤怠管理システムや業務管理システムは、さまざまなデバイスからログインすることができるため、現場だけでなく本社や支店、元請け業者の担当者が工事の進捗を確認することが可能になり、現場の管理工数の削減を実現。システム導入をすることによって空いた時間を有意義に使うことができます。

「週休2日」「定時退勤」などの働き方の導入

建設業界で完全週休2日制を導入している企業は全体の4割程度とかなり少ないといわれています。また、工事期間が短めに設定されていることに伴って、現場で働く作業員も長時間労働が続いている傾向が高いのです。これらの問題は、建設業界における人手不足の根本的な理由にもなっているため、業界全体で週休2日の導入や長時間労働の是正に取り組んでいくことが求められます。

AI導入による業務効率化

建設業界とAIは一見すると結びつかないように思われますが、AIを導入することによって業務効率化が実現できるのです。建設現場では、図面管理や作業器具の運用状況、作業員の工数管理などを管理者がアナログで管理していることが一般的ですが、管理者への負担はかなりのもの。そこで、AIを活用することで、蓄積された過去の膨大なデータから、効率的な手法を導き出したり、機械の故障や異常を知ることができるため業務効率化を実現できます。

コロナをきっかけに建設業界全体で働き方改革を進めていこう

今回は建設業界におけるコロナの影響やアフターコロナの建設業界で求められることなどにについてご紹介しました。建設会社は、新型コロナウイルスによる外出自粛やリモートワークの普及によって業績が悪化傾向にありました。しかし、東京オリンピックやリニア中央新幹線、大阪万博といった政府肝入りのプロジェクトの開催が決定していることから、建設需要は徐々に復調しています。それに伴い、さらなる人員確保が求められることが想定されるため、コロナをきっかけに建設業界全体での働き方改革を今から進めていきましょう。