施工管理は建設工事の工事全体を管理しながら、現場で技術者らを指揮監督する重要な立場です。ただし、施工管理の仕事を退職しようと考えている方もいます。退職を考えている方はどのような理由でそう考えているのでしょうか。今回は施工管理を退職する人が挙げる7つの理由と円満に退職する方法を紹介します。
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厚生労働省の令和2年度雇用動向調査によると、1年間における建設業の離職率は9.3%で、宿泊業・飲食サービス業(離職率1位)の25.6%や生活関連サービス業・飲食業(離職率2位)の22.3%などに比べれば、高い数字ではありません。16業種の中でも建設業全体の離職率は12番目と低い方です。
出典:厚生労働省「令和3年雇用動向調査/産業別入職率・離職率」(2022-10-20)
建設業の中で、施工管理だけに特化した公的なデータはありませんが、一般的には1級の施工管理の離職率は年間約5%、2級で約10%と言われています。他の建設業の職種と比べれば施工管理の離職率は高くありません。それでも一定数の人が退職しているのが現状です。
それでは退職する人は、どのような理由で施工管理の仕事から離れているのでしょうか。主な退職理由を7つ挙げてみました。
施工管理の仕事から離れる理由として離職者の多くが挙げているのは、仕事量の多さです。工事現場全体の管理を担う施工管理は、工程管理・品質管理・原価管理・安全管理のいわゆる「4大管理」を行います。それぞれの責任者である施工管理は、体力や神経を使うため、肉体的ストレスや精神的なストレスが蓄積しやすいと言えるでしょう。
4大管理以外にも、さまざま書類の作成や関係各所との打ち合わせなど業務内容は多岐に渡ります。しかも、それらを同時に遂行していくことが必要です。ただでさえ多すぎる業務を抱えているときに、予期せぬトラブルが起きて対応を迫られたりすると、キャパシティーを超えてしまうこともあるでしょう。
さらに新たな仕事を覚えたり、国家資格の勉強をしたりする場合、やるべきことが多すぎて逃げ出したくなってしまう人もいるようです。
やるべき仕事の量が多ければ、必然的に勤務時間も長くなりがちです。そのため残業の多さに辟易して施工管理の仕事を辞めてしまう人もいます。
そもそも建設業自体、他業種に比べると勤務時間が長い傾向にあります。国土交通省がまとめた「建設業における働き方改革」によれば、調査した産業の年間平均実労働時間が1,720時間(2016年度)なのに対して、建設業は2,056時間(2016年度)。1年に336時間もの差がありました。
建設業の中でも施工管理者は、工程や品質、原価や安全の管理をしながら工期の期限に間に合うよう各所に目を配らなければなりません。そのため現場の人が帰宅しても遅くまで残業することもあります。また工期に合わせて業務を行うため、十分な休暇が取れず、連休を確保するのが難しいことも少なくありません。
休みがとれても、現場でトラブルがあった場合などに携帯電話に連絡があり、駆けつけることもあるでしょう。休日でも常に着信が気になるという人もいます。そのため、家族や自分のためのプライベートな時間を大切にしたいと考える人は、仕事に費やす時間の多さがストレスとなって、辞めてしまうケースもあるのです。
仕事量の多さや勤務時間の長さに見合った給料がもらえないことに不満を感じて辞めてしまう人もいます。国税庁がまとめている民間給与実態統計調査結果(令和2年)によれば建設業全体の平均給与は、458万7千円。全体の平均給与である370万1千円に比べると高額です。
国税庁の調査では、施工管理に限定した平均給与は発表されていませんが、一般的に施工管理の年収は正社員で450万円以上とされています。資格や役職、年齢によって700万円前後まで年収が上がることもあり、決して給与水準は低くありません。
それでも「給料が見合わない」と考える人がいるのは、それだけ業務量の多さや、勤務時間の長さを負担に感じている人が多い証かもしれません。
特に「みなし残業制」や「固定残業制」で働いていて、決められた時間以上の残業を行っている場合は、不満もたまりやすいはずです。その不満がたまって離職の引き金になることもあります。
人間関係のストレスが原因で施工管理の仕事から離れる人もいます。厚生労働省の調査によると、建設業で「業務に関連したストレスや悩みがある」と回答した人の中で、ストレスの内容として「職場の人間関係」を挙げた人が31.3%と最も多いことがわかりました。
出典:厚生労働省「平成30年度我が国における過労死等の概要及び政府が過労死等の防止のために講じた施策の状況(P88)
この調査では現場監督(施工管理者)の方が、非現場監督や技能労働者に比べてストレスを感じる割合が高いこともわかりました。実際に施工管理の仕事では、職場の上司や現場の職人さん、施主など多くの人と関わるため、それぞれ人間関係に気を遣わなければなりません。
特に現場の職人さんは比較的年齢層が高いため、経験の浅さをとがめられたり、話が合わなかったりすることもあるでしょう。職人さんは歯に衣着せない物言いをする方も多いため、荒い言葉に傷つく人もいます。こうした人間関係に嫌気がさして施工管理の仕事から離れるのは、比較的若い人が多いようです。
建設現場の多くは屋外のため、冷暖房などの設備が整っているわけではありません。夏は酷暑、冬は寒さに耐えながら仕事をする機会も多いでしょう。粉塵や騒音の多い現場では目や耳に異常を感じることもあります。そうした労働環境に耐えられず辞めていく人もいます。
何より建設現場は身の危険と隣り合わせです。高所での作業や重機が行き交う現場では、どれだけ安全管理に万全を期していても、事故そのものをゼロにはできません。厚生労働省がまとめた「令和3年の労働災害発生状況」を見ても、建設業では「墜落・転落」事故や「交通事故(道路)」などで、年間に30名の命が失われています。
安全管理の責任をもつ施工管理者は、現場の安全に万全の注意を払いながら、自らの身の安全や健康も守らなければなりません。それでも実際に事故を見聞きしたときなどは、労働環境の厳しさを実感して、現場の仕事から離れる人もいます。
家庭の事情を理由に施工管理の仕事を辞める人もいます。家庭の事情の中でも近年、増えているのが親の介護を理由にした退職です。介護離職の問題は建設業以外でも深刻化しており、総務省の発表によれば、1年間に「介護・看護のため」に前職を離職した人は9万9千人に上ります。
施工管理でも40代以上を中心に親の介護を理由に退職する人がいます。建設業界にとって介護離職は、人手不足を加速させるものです。国も仕事と介護の両立支援策を打ち出してはいますが、中小企業などでは制度が十分に活用されているとは言えません。
また、介護以外にも「転勤が多く家族を連れて引越しできない」「子どもの進学の都合」「多忙で家族と一緒の時間が過ごせない」などの家庭の事情を理由に退職する人もいます。
自身のキャリアアップが目的で転職するケースもあります。施工管理職として、さらなる飛躍を求めて同業他社に移る。今の職場では残業が多く資格の取得が困難なため、資格取得をサポートしてくれる企業へ移るなどのケースです。
他にも同じ建築業界でも異なる分野でキャリアを積みたい。あるいは建設業界を離れてあらたな業界で経験を活かしたいと考え、施工管理の仕事を離れるケースもあるでしょう。
転職先探しには「転職サイト」や「ハローワーク」で探す方法や、知人に紹介してもらうなどの方法があります。いずれにしても大切なのは、次にどのような転職先を目指すかを明確にしておくことです。選択肢としては次の3つの方向性があります。
施工管理の仕事が気に入っている場合は、施工管理職としてのステップアップを目指しましょう。今の会社の待遇や給与に不満があるなら、より待遇や給与の良い大手ゼネコンへの転職に挑んでみるのもおすすめです。
今の会社の労働時間が長すぎる、業務量が多すぎると考えているなら、給与が少々下がっても、よりワークライフバランスを実現できる会社を選べば良いでしょう。
施工管理の経験や知識を活かしてステップチェンジするなら、同じ建設業で他のジャンルに転職するのも選択肢の一つです。
例えばハウスメーカーなら施工管理のノウハウを十分に活かせます。ゼネコンの営業や住宅設備関連の営業、自治体の土木部門・耐震工事部門などの公務員でも、施工管理の経験が活きるはずです。
施工管理の経験を活かして、建設業以外の仕事に転職するのもいいかもしれません。例えば不動産関連なら、建物を作る側だった施工管理の知識・経験が役立ちます。
また、大規模な不動産開発や再開発をするデベロッパー(不動産開発業者)なら、施工管理者に工事を依頼する立場となるため、より上流で施工管理者として培った経験が活かせるでしょう。
「立つ鳥跡を濁さず」と言います。転職するならトラブルを起こすことなく円満に退職したいものです。特に施工管理の仕事に転職したり、同じ建設業界に転職したりする場合、辞める会社とどこかでつながっている可能性もあります。円満に退職するに超したことはありません。円満退職には次のようなことが大切です。
退職までのスケジュールは、会社の就業規則にしたがって余裕をもって計画しましょう。会社の就業規則で「30日前までに申し出ること」と決まっているなら、それを守らなければなりません。
特に施工管理は現場の引き継ぎがあるため、突然辞められると現場に迷惑がかかってしまいます。できれば余裕をもって、遅くても3カ月前には申し出ると良いでしょう。
退職の意思を上司に伝えるときは、明確に退職理由を報告することが大切です。このときに「辞めたいと思っているんですが」などと相談をする形になってしまうと、引きとめにあったりして長引きます。
しっかりと「こうした理由のために辞める」と毅然と伝えてください。理由は不満のようなネガティブなものを挙げるのでなく、「ステップアップしたい」など、ポジティブな理由が良いでしょう。
退職日が決まったら、後は最後までしっかり自分にできることを全うするだけです。書類整理などの残務処理や、引き継ぎ業務、お世話になった人への挨拶回りなども行ってから辞めるのが社会人としてのマナーです。トラブルなく円満退社できれば、また何かの際に役立つことがあるかもしれません。
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