施工管理職は、建築現場のさまざまな管理業務において必要不可欠な存在です。施工管理職としてキャリアアップを図るなら、施工管理の技術を証明できる資格の取得が重要になります。
ここでは、施工管理職へのキャリアアップを目指したい方に向け、おすすめの資格やキャリアアップの事例などを解説します。(2021年11月現在)
施工管理職の仕事内容
施工管理職の仕事は、主に工事現場や建設現場における施工や予算、安全面への配慮です。特に重要な仕事内容は、次の項目です。
・工程管理:工事のスケジュールを把握し、進捗を管理する
・安全管理:作業現場の安全な環境を整え、注意喚起する
・原価管理:建設現場の人件費や材料費の原価を計算し管理する
・品質管理:使用する材料の寸法や品質が仕様書や規格に合致しているかチェックする
その他、次のように役所への手続きや書類作成など、工事に関する全てを管理する業務も行います。
施工管理職に求められる能力・スキルとは?
施工管理職に求められるスキルは、現場での調査から書類作成や整理などの作業まで多岐にわたります。
ここでは、施工管理職に特に必要な資質といわれる継続・管理力・対応力の3つの力に目を向け、詳しい内容を解説します。
地道な作業を続ける継続力
施工管理職はプロジェクトの統括者として、建設物の準備から完成まで責任をもって、地道な作業をこなす能力が必要です。建設プロジェクトは長期間のものから、複数の仕事を平行させるものまで多種多様なため、建築物に応じた柔軟な対応が施工管理職にも求められます。
また、ルーティンワークや書類作業も多く、日々の業務をコツコツ地道にこなせる能力が必要です。
プロジェクト全体を管理する力
プロジェクトの遅れを防ぐ管理力、人員の確保と適切な配置、1日の作業進捗の確認など、全体を管理する能力が必要です。当日の作業内容や資材搬入の時間確認など、細かな配慮をとおして、プロジェクト全体の動きを確認しなければなりません。
管理が不十分な場合は納期に遅れるだけでなく、労災事故につながるリスクも高まります。細かい点にまで気を使って管理する能力が施工管理職に求められます。
突発的なトラブルに対応する力
建設現場の進捗は天候によって大きく左右されるため、雨天や荒天が続いて工期に遅れが出るケースは少なくありません。その他、近隣住民とのトラブルなど、突発的な事態に対応する局面は多くあります。
スケジュールの再調整は、施工管理職にとって特に重要な役割です。工期の遅れを最小限に抑えるための柔軟性や、スタッフへの臨機応変な対応力が必要になります。
施工管理職で取得したい資格
施工管理職でキャリアアップを目指すなら、建築施工管理技能士の資格取得が有効です。建築施工管理技能士は国土交通省が定めた7種類の工事種類に分類されており、それぞれ1・2級に分かれています。
では、建築施工管理技能士の1級と2級ではどのような違いがあるのでしょうか。7種類の工事種類における資格の詳細もあわせて解説します。
建築施工管理技能士(1・2級)
建築施工管理技能士は、建築現場での監督を行えるようになる国家資格です。エキスパートとしての現場監督や、設計事務所での仕事にも有利になります。
建築施工管理技能士における1級と2級の違いは、担当できる工事現場の制限範囲です。1級は担当範囲に制限がないのに対し、2級は一般建築業営業所の専任技術者、主任技術者までと制限があります。
また、2級の資格範囲は、建築・躯体・仕上げの3つに分かれています。どの資格を取得するかで担当業務は変わりますが、3回試験を受けて合格すれば全ての業務を担当できます。
参照:
建設管理センター 建築施工管理技士(2021-11-29)
土木施工管理技能士(1・2級)
土木施工管理技能士とは、土木工事を施工管理するための国家資格です。土木工事に関する施工計画や工程管理、監督など業務は多岐にわたります。
土木施工管理技能士における1級と2級の違いは、扱える工事規模です。1級は大きな土木工事の施工管理ができるのに対し、2級は1級と比較すると小規模な土木工事を施工します。
1級を取得すると、大きな土木工事で設定が必要な監理技術者としての勤務も可能です。
参照:
建設管理センター 土木施工管理技士(2021-11-29)
電気工事施工管理技能士(1・2級)
電気工事施工管理技能士とは、建造物の建設や増築などに必要となる電気工事の施工計画や工程管理、監督業の際に必要な国家資格です。施工管理上の技術責任者となるため、キャリアアップにも役立ちます。
電気工事施工管理技能士における1級と2級の違いは、扱える案件の規模の大きさです。
1級の場合、ビルや商業施設といった規模の大きな案件で下請けの仕事ができます。2級は総額4,000万円未満で下請けとして依頼される中規模案件の現場で活躍できます。
参照:
建設管理センター 電気工事施工管理技士(2021-11-29)
管工事施工管理技士(1・2級)
管工事施工管理技士とは、管工事における施工管理の専門的な国家資格です。この資格を取得すれば、冷暖房設備や空調設備、上下水道設備、吸排気ダクト、ガス管、浄化槽など配管工事のスペシャリストになれます。
管工事施工管理技士は資格のレベルに応じて、職責や扱える案件も異なります。
1級を取得すると特定建設業の専任技術者、一般建設業の主任技術者と監理技術者になることが可能です。一方、2級は一般建設業の専任技術者、主任技術者として活躍できます。
参照:
建設管理センター 管工事施工管理技士(2021-11-29)
造園施工管理技士(1・2級)
造園施工管理技士とは、工事の中でも造園の分野に携わる国家資格です。公園や学校、道路、寺院、料亭、本格的な日本庭園など、さまざまな場面で活躍できます。
1級は2級と比較すると幅広い業務に携われます。
1級は造園工事の現場で配置が義務付けられている監理技術者と主任技術者になれます。2級は一般建設業の主任技術者として活躍が可能です。
参照:
建設管理センター 造園施工管理技士(2021-11-29)
建設機械施工技士(1・2級)
建設機械施工技士とは、建設機械を使った工事の品質管理や安全管理に必要な国家資格です。一定金額以上の工事では、この資格を取得した者の常駐が必要になります。
参照:
建設管理センター 建設機械施工技士(2021-11-29)
1級は各種建築機械を用いた施工の指導や監督者、大規模な工事現場での主任技術者と監督技術者になれます。2級は機械に応じて6種類の専門に分かれており、取得した種類の建設機械の指導や監督業務が可能です。
電気通信工事施工管理技士(1・2級)
電気通信工事施工管理技士とは、有線LANやWi-Fiなどの設置工事のスペシャリストの証明となる、令和元年からスタートした新しい国家資格です。
2級を取得すると、一般建設業の営業所での専任技術者や現場ごとに設置される主任技術者になれます。1級は、2級の範囲にプラスして、特定の建設業における営業所の専任技術者と現場ごとに設置される監理技術者として活躍できます。
参照:
建設管理センター 建設機械施工技士(2021-11-29)
施工管理技能士の資格を取得するメリット
施工管理技能士の資格は、専門的な分野ごとで活躍できる国家資格です。1級・2級のどちらもニーズが高く、資格取得者はキャリアアップが実現できます。
ここでは、施工管理技能士を取得する代表的なメリットとして、監理技術者・主任技術者になれる、転職や昇給・昇進に役立つ、60歳になってもキャリアが充実の3つをあげて解説します。
監理技術者・主任技術者になれる
施工管理技能士になると、それぞれの分野で専任の技術者として仕事に従事できます。2級施工管理技能士になれば主任技術者として、1級施工管理技能士になれば監理技術者や主任技術者として仕事をします。
特に1級施工管理技能士の資格は、取得に豊富な経験や専門性が必要なため、持っているだけで職場にとって貴重な人材になります。1級施工管理技能士は各現場の安全管理や技術力など責任ある仕事を任せられる機会が多く、現場のまとめ役としての役割を担うことになるでしょう。
監理技術者や主任技術者として、やりがいやモチベーションを高くもって職務に就ける点がメリットです。
転職や昇給・昇進に役立つ
施工管理技士の資格を保持する専任の技術者は企業からのニーズや需要が高いため、転職や昇給・昇進などキャリアアップに有利です。
建築業界以外にも独立行政法人や建築設計、ハウスメーカーや工務店関係の営業など幅広い場で活躍できる可能性があります。企業によっては資格手当がつくため、給与のベースアップや年収アップも見込めるでしょう。
1級・2級のどちらも建設施工管理技士のニーズはありますが、建設業界では特に1級建設施工管理技士の不足が問題となっています。
通常の転職市場では高齢になるほど転職が厳しくなりますが、1級建設施工管理技士を取得すると年齢にさほど影響なく就職に有利です。
職場の中心人物として、高待遇でワンランク上の役職に就くことも期待できます。
60歳になってもキャリアが充実
建築施工管理技能士の資格と現場での経験があれば、60代になっても収入を落とさずに現場の管理者として働くことが可能です。
60代以降は、若い年代と比較するとどうしても体力の衰えがあるため、現場を手伝う作業は難しくなります。しかし、建築施工管理技能士の資格があれば、施工管理という仕事に従事した豊富な経験を生かして貢献できます。
特に、安全管理や工事の品質管理などでは豊富な経験から、社内だけでなく客先からも頼られる機会が多くあります。
また、建築施工管理技能士の仕事は会社勤めだけでなく、個人事業主として独立する際にも有用です。今までの経験と専門性を生かし、定年後も従業員を抱えながら経営を続けられます。
将来、会社員での経験を生かして独立を検討している人にとっては最適の職種です。
施工管理職のキャリアアップ事例
施工管理職としてキャリアアップした人には、どのような傾向があるのでしょうか。ここでは施工管理職として実際にキャリアアップした人たちの事例を紹介します。
どのような段階で昇給や昇進したのかも併せて解説します。ご自身の思い描くキャリアパスの実現や企業選びの参考として、成功事例を役立ててください。
資格を取得し、現場のプロとしてキャリアアップ
資格を取得し、現場のプロとしてキャリアアップした大卒のAさんの事例を紹介します。
Aさんは大学で施工関係を勉強して卒業した後、初任給は400万円の待遇で施工管理者として企業に入社しました。その後、現場で経験を積みながら2級施工管理技能士の資格を取得。昇進・昇給を果たし、現在では専任技術者として活躍しています。
年収は初任給よりも100万円高い500万円になり、生活にも余裕がでてきました。今後は会社でのさらなる昇進を目指し、1級施工管理技能士の資格取得のために日々研鑽を積んでいます。
Aさんがキャリアアップした要因は、現場で経験を積みながら資格を取得した点です。大学時点で指定学科を卒業しており、それを生かして着実に技術や専門性を高めています。
大手ゼネコンに転職してキャリアアップ
大手ゼネコンに転職してキャリアアップに成功した、高卒のBさんの事例を紹介します。
Bさんは高校卒業後、年収350万円の待遇で実務経験を積んだ後、2級施工管理技能士の資格を取得しました。さらに現場で経験を積んだ後、大手ゼネコンに転職し、年収は前よりも100万円アップの450万円に昇給しています。
現在は、責任者として各作業現場の管理や人員育成に努めています。今後はさらに昇進と昇給を実現すべく、1級施工管理技能士の取得も視野に入れています。
Bさんは現場での経験を積みながら資格を取得し、大手ゼネコンへの転職を成功させた点が特長的です。施工管理技能者としての技術を証明するうえで、国家資格の取得は大きな強みになります。
特に1級施工管理技能士は希少人材なため、学歴を問わず転職市場で有利です。
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施工管理職でキャリアアップを図るなら、専門的な技術を有する証明として資格の取得がおすすめです。特に建築施工管理技能士は国家資格なので、転職やキャリアアップで有利になります。
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